アリで攻略する渇水時のサクラマス
~アップストリーム アンギュレーション メソッド
TOKYO ROD & GUN CLUB 田中 秀人
(サクラマス! アリだ!)
近年ますます大人気のサクラマス。
釣り方もどんどん熟成され紹介されてきた。
これ以上方法はないのではないかという所まで、
この釣りへの執念は熱を帯びている。
サクラマスを本流でプラッギング狙う場合、どんな釣り方があるのだろうか。
流れの中のサクラマスに絞って考える。
クロスストリームの釣り、ダウンクロスの釣り、ドリフトの釣り。
これは3つの大きな流れだろう。
そこにトゥイッチング、ジャーキング、ストップアンドゴー、
ここぞという場所でのシェイクか。
リトリーブスピードの速いか遅いか、その組み合わせ。
ルアーのチョイスはフローティング、ディープダイバー、
ミディアムレンジの ディープダイバー、シンキング、
バイブレーション。
サクラマスはどこについているのか?
かけ上がりはどこだ?
スリットはどこだ?
ポイントのヘッドか?テールか?ストラクチャーは?
どの層を引くのか、どんなコースでどんなアクション?
遡上の状況は?釣果状況は?スレているのか?
潮はどうだ?水量は水温は?水色は?
ターンさせて食わせるタイミングをどこで作る?
頭の中を駆け巡る状況判断。
それを組み合わせながら攻略する。
ただ、実績ポイントで投げて巻いてでは確率は上がらない。
そして近年ブームとなっている、ヘビーシンキングの登場。
いままで限られた層を狙っていた平面の釣りが、
しっかりと沈むヘビーシンキングにより、
横の変化から縦の変化がプラスされて、流れの中を蝶々が舞うように、
3Dの動きでサクラマスを誘い出す作戦が可能となった。
これは僕が世に紹介した釣り方
「クイックトゥイッチン メソッド」がそれだ。
この釣り方により、今までのどの釣り方でも出なかったサクラマスが
ヒットするようになった。
さて、ヘビーシンキングミノー全盛時代のなかで、
群を抜いて釣果をのばしている アリ。
50サイズは主に渓流。
サクラマスを狙うには小ぶりすぎる。
リアシングル オンリーの方法もありだが、
基本的にはアリ50のフックはサクラには小さすぎる。
これはまた、深い世界なのだが、こちらのほうは次の課題として
熟成してゆく予定だ。
ビッグトラウト攻略のイメージはまだまだ広がっているのである。
現在テストで円熟期を迎えているアリ70は
このサクラマス ヘビーシンキング時代に殴り込みをかける
秘密兵器である。
できれば80サイズも加えて、
初期の水量のあるクロスストリームやドリフトの釣りにも
導入したいところだが、まずは70サイズから先陣を切る。
(アリ70 プロト)
このアリの70プロトが大暴れしている。
最近の釣行記を覗いていただければ、その実力は問答無用であろう。
そしてこのアリ70のポテンシャルは100%の自信でサクラマス攻略にすさまじい威力を発揮すると確信していた。
イメージは完全に出来上がって、
あとはこのプロトの70で実釣するだけであった。
その使い方は、クイックトゥイッチン メソッド。
沈ませる深さ、ポイントまで入れる角度、ターンさせる位置を考えながら、
3Dで流れを攻略する。
70のサイズの出番は、
・中小規模河川のサクラマス
・マンプレッシャーでスレている、サクラマスへのサイズダウンミノー
・通常のミノーでは届かない深いレンジへの送り込み
・渇水時のサクラマス
ざっくりまとめると上記の4パターン。
さていよいよ、現場での実釣報告となる。
当日は6月の中旬に差し掛かろうとする6月9日。
サクラマスシーズンとしては最終盤である。
このスレたターゲットを、渇水の中で、高水温時のサクラマスをどう狙うのか?
新しいメソッドの紹介と共に、ドキュメントをご一読いただきたい。
「本邦初公開!
アップストリーム アンギュレーション メソッド」
場所は庄川 富山県のサクラマス。
この川において、今年のユキシロは豪雪で長く太かった。
3月に解禁したのだが、平水より1m以上水位が高く、解禁は撃沈。
その後も5月中旬まで水位が高い状況が続き、
攻撃的な釣りをするには厳しい状況であった。
ポツリポツリと釣れてはいるが、僕の好きなポイントは潰れて、
下流域やテトラまわり、大場所などの
スローな釣りが釣れているメインの手法であった。
どうも触手が動かない。
「水位が下がってから出陣だ・・」
と思っているうちにシーズンが最終盤まで来てしまった。
5月終盤から6月頭まで北海道に遠征していたため、
この時期を逃してしまった感はあるが、
今シーズン中にアリ70でのサクラマス ゲットは、
僕の中で重要なミッションの一つである。
おそらく、北海道遠征中にいきなり良い水位に下がったのだろう。
毎日水位計を覗いていたので、狙いの水位表示に心が揺れた。
しかし体は北の大地。一度に二つのことはできない。
さて解禁日以来の釣行となった庄川。
覗いてみると渇水だ・・・。
プールは底まで見渡せる。トロ瀬もショボショボ・・・。
昨晩から雨が降ったがスズメの涙のようだ。
今は雨も上がり、時折雲間から陽がさす。
希望の水位から50cmは低い・・・。
さてどうする???
アリ70で一番おおらかに釣れる状況ではない。
そこで、いままでこっそりとやっていたメソッドをご紹介したい。
渇水時のサクラマスを アップストリームで釣る、
「アップストリーム アンギュレーション メソッド」がこれだ。
渇水・・スレまくっているサクラマス。
もはやマスとしての本能は失い、鮭のようになっている。
これはもはや、喰いあげて激しくバイトするとか、追っかけてきて
ガンと食うなどという状況ではない。
通常この水量と河川の雰囲気、水温、水色、
ましてや6月中盤というサクラマスとしては最終盤の時期に、
ロッドを振るまでもなく諦めてしまうアングラーも多いかもしれない。
サクラマスの釣りは
クロスやダウンクロスの釣りと決めつけていないだろうか?
こうした今日の状況で、ポイントに上流に立ったらもう終わりだ。
この釣り方は遡上アメマスのアップでのスローな釣り、
カラフトマスなどの遡上魚のアップの釣り、
湖沼型サクラマスが遡上する
秋の河川でのアップの釣りにも通じるものがある。
一つ大きく違うのは、上記の釣りが、
魚を見つけて狙うサイトでの釣りに対し、
サクラマスのこの釣り方はブラインドの釣りで、
見えないサクラマスに仕掛ける手探りの釣りである。
それゆえに想像力を大きく使って釣りをすることが肝となるのだ。
狙うポイントはガンガン瀬の中のスポット。
縦にスリットが入ってその中にマスが入っている。
ヤマメを渓流で狙うように、アップで釣る。
ただし、底に張り付いているので
しっかりとその泳層まで沈めることが重要だ。
中層まで追っかけて喰いあげることは無い。
大切なことは、スリットの位置と深さ、形状を把握すること。
今日の河川状況では好条件に当てはまるスリットは5か所くらいしかない。
下流域はトロで流れが死んでしまっている。
上流域はチャラチャラで川を渡れるくらい渇水。
もはやサクラマスがやる気を見せる状況ではない。
狙いは中流域のガンガン瀬の中である。
1つ目のガンガン瀬のスリット。
アップで上流に投げてボトムを少し切るくらいまで沈ませて、
なるべくストレートに引いてくる。
トゥイッチをかけるにしても軽くキラッとフラッシュする程度の
優しいアクションを2~3回。
食わせるタイミングでの早引きは厳禁。
なるべく遅く、流速に負けない程度のスピードで引く。
もう一つコツがある。
流心の少し脇を通して、マスが定位しているだあろう位置の前で
「しの字」にほんの少し角度をつけてやるのである。
角度にしてほんの5度くらいだろうか。
リトリーブコースに捻じれ(アンギュレーション)を作ってやる。
定位するマスの頭の前、10センチ位で角度をつけるイメージだ。
これは一投で決まらなくても、沈ませる深さやリトリーブのコース、
角度を付ける場所とタイミングなどを変えてやれば、
何回かチャンスがある。
魚の位置を想像しながら、
そのコースに通すイメージを微調整しながら一投一投に込めるのだ。
但し、禁止事項でポイントを潰さなければの話だが・・・。
では何をやるとポイントが潰れるのか?
禁止事項をまとめる。
・過度のウエーディングは厳禁。
できれば水に入らない。
・ポイントの上流に入らない。
上に入ったらもう終わり。
ダウンやダウンクロスの釣りで、このマスは釣れないのである。
・激しいトゥイッチングやジャーキングの禁止。
この状況で激しいアクションは一発でスレてポイントを潰す。
これをやらなければ、何度かチャンスがある。
一つ目のポイントで音なし。
活性の低い魚の、さらにピンポイントでも反応せず。
こうした場合にはさらに作戦を仕掛ける。
これが「食わせないリトリーブ。」
怒りを煽ってスイッチを入れる法則。
アップストリーム アンギュレーション メソッドの
真髄、核心の部分である。
食わせないリトリーブとはこうだ。
マスを食わせるためのリトリーブコースが水深1.5mだとする。
先ずはそのコースの表層をただ引きの早引きする。
このリトリーブを食い上げって襲うような活性はない。
しかしマスはイラッとしている。
このイラッツが重要なのだ。
次にマスの定位する位置を外したコースをあえて引く。
次のキャストでは60Cm~1m位離れた脇のラインを
1mほど沈めて、ただ引きの早引きをする。
今度は斜め横上を通り抜ける侵入者にイライラする。
この侵入者がこれ以上近づいたら追っ払ってやる
と怒りに火が付いたはずだ。
さて、ここでいよいよ喰わせのリトリーブだ。
男は待って勝負をかける。
そして慌てないのだ。
「準備万端、仕上げをご労じろ」
スリットの上流にミノーをキャスト。
ラインスラックを取りながら、
水深になじませながらまずの定位する層へ。
ロッドを立てて水深を調整しながら送り込む。
リトリーブは底波よりほんの少し早くミノーが動く程度で、
大ヤマメを狙う時の僕の釣り方、
スーパースロー ドリフティング メッソッドにも通じる。
そしてここぞと言う位置でほんの少しロッドを倒す。
ここでアップストリームリトリーブにアンギュレーションが生まれる。
このタイミングでドスン!と来るのである。
(サクラ咲く!)
この日は3か所目の核心のスリットであの衝撃が走った。
アリ70 アップストリーム アンギュレーション メソッドでの一本。
相棒はノリクラロッド 58MH この釣りのために築き上げられた、
ファイティング モダン バンブー である。
50cm台のサクラマスだが、この絶望的状況で絞り出した一本は
途方もない価値がある。
(アリとノリクラロッド バンブー)
アリ70のポテンシャル。
7cm 16gという重量が一気に送り込みたい層まで到達。
そして重くても泳ぐ脅威の性能。
軽いトゥイッチにキラキラと瞬時に反応するレスポンスの高さ。
ベストな状況では、早引き、激しいトゥイッチ、ジャーク、
クロスにダウンクロスに、激流の重い流れでも決して飛び出さない
物凄いポテンシャルだ。
(サクラマス アリをガブリ!)
今回のサクラマスも、僕のNEWメソッドを限りなくスムーズに演出してくれた。
というよりも・・・この常識破りのミノーが、
このメソッドを完結させたといっても過言ではない。
恐ろしいミノー アリ70・・・。
歴史が動き出した・・・。
本日のミッション達成。
フィールドから山口 斉にLINEを入れる。
「庄川 サクラマス アリ70で今、釣りました・・。」
短いメッセージに全ての思いを乗せた。
もう一つの宿題・・・
それは飛騨の本流ワイルド ビッグレインボーをアリ70で・・・
これもまた、イメージは出来上がっている。
普段はお客さんや後輩に遠慮して、
飛騨の本流にあまり手を付けていないが、
ミッションのために真剣にやらせてもらいます。
火曜日の定休日に本流レインボーを狙おうとすると、
「えーっつ・・・ヒデさん、本流やるんですか???」
暗にやるなと、同じく火曜日休みのお客から視線を送られる。
そりゃバコバコにやられたら嫌だよな・・。
師匠の則さんからも、生前よく言われた。
「地元の川は、年を取って動けなくなってからでもケンケンして行ける。
今は封印して旅に出ろ。釣りの幅を磨くのだ。」
そんなこともあって、
いつも地元のレインボーは遠慮しながらB級、C級ポイントで狙っている。
特Aポイントはなるべく触らないようにしている。
今日からは、ミッション達成のために特Aポイントの封印を解く・・・。
しばしお許しを・・・。
次なるビッグファイトにご期待ください。
(ネックスト ビッグワンに続く)
|