ARIとワイルド ビッグ レインボー

投稿日時 2015-06-12 12:42:33 | カテゴリ: 1.トラウト

アリとワイルド ビッグ レインボー 60cmオーバー 釣行記

TOKYO ROD & GUN CLUB  田中 秀人

 

飛騨の本流にはとんでもないレインボーが潜む。

そのレインボーを狙って、48年・・・

もう半世紀近くもこの魚を狙っている。

うーん・・馬齢を重ねたものだ・・。

3歳から釣りを始め、はじめって釣った釣り堀のデカニジ、

そして川上川エンサイ護岸から釣った、

生涯初のワイルドレインボー 15cm。

親父に一緒に竿を握ってもらい、2人で釣った初めての天然ニジマス。

(そりゃ親父が釣って、お前は手を添えていただけだろう!)

ここから僕とワイルドレインボーとの付き合いが始まる。

最初は脈釣り(餌釣り)、そしてテンカラ、

小学5年からはルアーに目覚めスピナーとスプーンでこの魚を狙った。

 

当然そのルアーとタックルでは大物の相手にはならない。

何度か訳のわからない巨大な相手にやられたが、それは鯉だろう・・・

くらいにしか思っていなかった。

今思うとあれはビッグ レインボーだったと・・・。

 

25年位前の話だろうか・・

師匠の則さんがブラウニーを

九頭竜に持ち込んでサクラマスを連発した。

そう、流れのサクラマスプラッギングの幕開けだ。

その記事を見ておどろいた僕は、

すぐにブラウニー11cmとラパラの11cmを手に

地元の本流に向かった。

ピンときた・・・・あの流れでブラウニーを引いたら・・・

アユの友釣りをやっていてビッグレインボーに

おとりアユを取られた経験が何度もあった。

(高校生まではアユもやっていた。何でもやるな、お前は!)

間違いなくこの流れのプラッギング・・この釣り方で・・・。

 

その時は物凄いことが起きた。

流れの中でアユを喰っている

ビッグレインボーが1日10本以上ヒットした。

それからしばらくは

自分一人で、そのパラダイスを独占したのである。

地元の腕利き自慢のルアーマンは、

「そんな早い流れで釣れるわけがない。

デカいやつは淵の底にいる。沈めなければ釣れない。」

あいつは嘘つきだ呼ばわりされた。

 

そして長い付き合いが始まる。

今では多くのアングラーが

飛騨の本流のガンガン瀬でビッグレインボーを狙っている。

 

それから色んなことがあったが、今年の飛騨の本流は大変だ。

昨年の災害で至る所で工事中。

当然濁りが出て平日は釣りにならないことが多い。

そしてあの災害で魚の数は30%にまで減っている。

日曜・祝日に工事が休みで濁りが止まっても、底石には泥が堆積し、

川虫の数は10%くらいまでに減ってしまった。

当然小魚に影響し、ビッグトラウトにも影響する。

あまり良い状況ではない。

 

今年は高山市街地を流れる本流の下流域に出かける頻度は減り、

最下流域で合流するもう一つの本流に多く出かけている。

もう一方の本流のほうが

災害のダメージが少なかったのがその理由。

こちらの本流も下流域はワイルドレインボーの生活圏で、

状況によるが同系統のレインボーが狙える。

面白いのは河川環境で体色に少し違いがあること。

特徴としてどちらの河川のワイルドも全鰭ピンピンは当然。

腹鰭と尻鰭の先端が白い。

このタイプを釣ったらぜひリリースをお願いしたい。

 

昭和初期から原種の血統を自然産卵で繋いでいる一群だからだ。

これは北米原産のワイルドレインボーの稚魚が

飛騨水産試験場と漁協の運営で、

1950年代に飛騨の本流に放流された末裔だ。

国内で北海道を除き、本州で自然産卵しているニジマスは

飛騨のこの本流の系統と、

中禅寺湖流入の一部河川しか聞いたことがない。

それだけ大切な魚なのだ。

 

今年の課題はアリ60&70で飛騨の本流レインボーを

オリジナルのバンブー ノリクラロッド58MHで仕留めること。

イメージは出来ている。

ビッグレインボーはセレクティブで小型のミノーを好む傾向にある。

ビッグトラウトチューンしたアリ50でもほとんどやられてしまう。

フックのサイズの問題だ。

投入する60&70 適性のフックとスプリットリングが使える。

張り付いて動かないレインボーの層に入れてフラッシングで誘うのだ。

 

最近は、皆さんにも釣ってもらいたいという思いから、

レインボーの特Aポイントはあまり手を付けていない。

しかし、しばしこのミッション、

アリとノリクラロッドのテストのために封印を解く。

 

早速出かけたあの本流。

巨大な岩がゴロゴロと点在して、遡行はまるでロッククライミングだ。

下流域に行けば行くほどゴルジェになり人の侵入を拒む。

相当の経験がなければ危険なエリアだ。

今日はドピーカン・・

梅雨入りした東海地方だが飛騨はまだそれほどの雨は降っていない。

今日も夕方から雲行きが怪しくなるまでは、晴天の一日だった。

 

朝一は仕事をこなして、午前中ゆっくり出かける。

朝マヅメは?・・・

アユを喰っている奴らは

稚アユが活発に動き出す午前9時、10時ころから連動して活性が上がる。

日中に激しく捕食するのである。

この時期のビッグレインボーを手にした時間帯は、

ほとんどが真っ昼間なのである。

 

そしてドピーカンの真っ昼間・・。

今まで何本も50オーバーの岩魚やビッグレインボーを手にしてきた、

特Aポイント・・・あの大場所の頭。

飛騨ルアーフィッシング 高原川ルアー ビックレインボー

(61cm激しくバイト)

 

いきなり、その頭に入ってアリの70を送り込む。

泡の下に入りキラッツキラッツキラッツキラッツキラッツ・・

5回目のトゥイッチにリトリーブがフッと止まった。

まるで藻に引っかかったような、箒で掃くようなモゾッとした当たり。

「来た!ビッグレインボー!!」

その小さなあたりがビッグレインボー特有の押さえ込みであることは

過去の経験で熟知している。

ビッグレインボーの当たりはコツンと小さいことが多い。

思いっきり合わせを入れてやると、瞬時にターボチャージャーがかかり、

ビッグワンが猛スピードで走りだした。

20mドラッグを引き出してジャーンプ!!ジャーンプ!!

「跳べ!跳べ!さあ来い!」

「ヒュッヒュッツヒュー!!」思わず声が上ずる。

「ビイーーン!」空気を切り裂く糸鳴りがする。

恐ろしいスピードと強烈な引き。

さらにシャープなジャンプを繰り返す。

絶好調の魚体とパワーとスピードと!

一年中で今が一番強いのだ。

このファイト・・たまりません・・・・。

こんな物凄いファイトはワイルドレインボー以外では味わえない。

この場所は水通しの良い瀬から

一気に大淵へと流れ込むその岩盤の頭だ。

下に走っても障害物は無い。

どれだけ走っても大丈夫だ、さあ来い。

とにかくロッドをためて時間をかけてファイトする。

 

パーフェクトなファイト。

パーフェクトな魚体。

パーフェクトな昼下がり。

ワイルドレインボー

(アリとニジとノリクラロッド)

 

バンブーロッドのしなやかさが見事にパワーをいなして、

今、あの憧れのワイルド ビッグレインボーが手に落ちた。

6月の恋の季節に鰭が赤く色づいている。

(ここまで赤いのは、ちょっと珍しいな・・・。)

先端が白い腹鰭と尾鰭。

これはピンピンの鰭と共にワイルドの証だ。

 

見事なメスのワイルド ビッグレインボー 61cm

これが僕らの憧れである。

水につけたまま撮影して、なるべく早く流れに返す。

弱らせて殺すわけにはいかない。

レインボーは強烈なファイターだが

ファイトの後に酸欠で死んでしまうことがある。

撮影はなるべく負担をかけず水の中で、それも短時間で・・・。

プロのカメラマンのごとくバシャバシャと連写して

(腕は素人ですが、連写だけ忙しく・・)素早くリリースの体制へ。

そしてここからは、

しっかり時間をかけて自力で強く泳ぎだすまで時間をかける。

もうこの一本で十分だ。

 

このワイルドレインボー、背中に傷があった。

プロポーション、全鰭、コンディションともにパーフェクトなのだが、

背中の傷が・・。

よく見ると左右対称に傷がある。爪で刺したような・・・。

おそらく猛禽類に狙われて背中を爪で掴まれたのだろう。

大きすぎて持ち上げられなくて命を繋いだのだろうか・・。

余計に殺すわけにはいかない。

強い願いの元、完全なリリースを心がける。

どうしても産卵してこのDNAを繋いでもらいたいのだ。

このメスの子孫をまた何年か後に釣ることができますように・・・。

憧れと願いの中で淵の底に消えるビッグレインボーを見送った。

飛騨ビックレインボー

( いい顔してるなー)

 

いつまでもこんな素晴らしいワイルドレインボーを、

狙って釣れる川でありますようにと願う。

「全鰭ピンピン、淡いピンクの帯、淡いピンクの頬、

腹鰭と尻鰭の先端が白い。」

釣行記の中ごろにも書いているので、しつこいようだが重ねてお願いする。

このタイプのレインボーを飛騨で釣ったら、

サイズにかかわらず全リリースをお願いしたい。

今は放流されていない原種の末裔。

絶えてしまったらそこで絶滅である。

 

いよいよお届けできるアリ60&70.

恐ろしく釣れるアリ60&70はこのレインボーへの近道だ。

(さらにドアップのアリとニジのショット。

  猛禽類のように厳しいワイルドの眼光だ!)

 

しかし、運命のファイトを制したのであれば、

その後は乱暴に扱うのでなく優しく接していただきたい。

ファイトは激しく、そのあとは優しく・・・

 

この思いを、

お願いに変えて本日のロッドオフとする。  (さらなる旅へと続く・・・)

 






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