神秘の湖畔に夕焼けのヒメマスを見た
東京ロッド&ガン クラブ 田中 秀人
ヒメマス それは陸封され一生湖で暮らす紅鮭。
この希少な鮭鱒族は限られた地域と限られた湖でしかお目にかかれない。
ここは北海道、道東の屈斜路湖
あのクッシーで有名な恐竜が棲む?神秘の湖である。
ヒメマスのほかにニジマスやアメマスなどもターゲットとなるが、
今回は本州でなかなかお目にかかれないあのヒメマスを狙ってやってきた。
この地のヒメマス、秋から晩秋にかけて浅場にのっこみ、ポイントが絞りやすい状況になる。
ルアーのキャステングで狙いやすい状況が生まれるのだ。
水面をピチャピチャやりながら群れが近づいてくる。
表層でも釣れるが、今日の群れはボトムを這うようにグルグル巻いている。
活性が高ければフローティングミノーでも釣れるとの事だが、
シーズン終盤のこの時期は叩かれまくってスレてしまっている。
こういう状況では沈めてスローにネチネチと狙いたい。
この日は、キャスト~ボトムを取り~リフト&フォールが効果的であった。
キャストを続けると群れが追いかけてきてすぐ目の前で渦を巻き群れ始める。
ロングキャストは必要なくなり、ひたすらねちっこくリフト&フォールを繰り返す。
そしてそのバイトはフォール時に集中していた。
同行の友人たちは既にコツをつかみ連発している。
素直にそのアクションを参考にして、僕のヒット率もうなぎ上りに上がっていった。
コツをつかむとヒットのボルテージはどんどん上がってゆく。
フォール・・・それもなるべくゆっくりとユラユラ沈みながら誘ってドン。
さらにスレてもっとスレるほど、
フォールへの反応を意識して、この赤いヒメマスを誘うのである。
小型のスプーンで狙うことが定番のヒメマス。
あいにく小型スプーンは2つほどしかBOXにはなく、
よさげな沈むプラグ、それもひらひらと沈むプラグを多用することになる。
小型シンキングミノー、小型シンキングペンシル、小型のジグなど
ヒラヒラにハイテンション。
アリの50 S H UHの活躍はもちろん、
リップのとれたシンペン状態のアリも好感触で湖には仲間の笑顔と笑い声が響き渡る。
圧巻は小型サイズの須佐。
このシーバス用に開発されたプラグの小型版がハマったのだ。
その沈下速度とひらひら沈みながら舞う様に落ちて行くフォーリング姿勢が
あの日の釣りにジャストフィットした。
サンレアル 須佐のスモールでヒメマス爆発である。
晩秋~初冬に入り始めた11月の初旬。
ヒメマスのシーズンとしては最終盤にあたる。
婚姻色で染まったその赤い魚体は晩秋の落葉と伴に黒みを帯び、
日没寸前の夕焼けを思わせる神秘の光沢を放っていた。
なんと神々しいカオスの面構えとソリッドゴールドに輝く瞳。
普段見慣れた鱒族とはまた違った、独特の赤黒い衣装をまとうその姿は
まるで戦国武将のように幻想的である。
敵は風と低気温。
湖の風はあっと言う間に僕らの体温を奪い、小雪が舞う。
ガイドは凍結し、水温3℃以下のウエーディングは下半身の感覚をマヒさせてゆく。
しかしそれ以上に熱いヒメマスのアタックに湯気が立つ。
この貴重な鮭鱒族に出会い、辛い初冬の釣りに、一時の安らぎと織りなしてやってくる興奮に身も汗ばむ。
流れに逆らうことなく、心地良く水面に浸ってゆくのであった。
晩秋の道東、そこには何度も通いたくなる未知なる釣りが沢山待っている。
一つの形にとらわれないルアーフィッシングの面白さと奥の深さが、
あの地の旬にぎっしり詰まっている。
この繊細かつ雄大なフィールドの魅力にすっかり憑りつかれてしまった。
また行こうあの壮大なる北の大地へ・・
工房にこもり、年末に向かう多忙な日常と雑踏のなか、
今もまだ僕の魂は北に置きっぱなしになっている。
早く拾いに戻らなければ、抜け殻になってしまう。
ペンを執り印刀を握り、キーボードを打つ手に反比例して
頭の中は今日もあの夕焼けに支配されている・・・
目を閉じれば湖上の鏡に映った真っ赤な山々が、
手が届くほど近くまで迫って来るのであった。 (続く・・・)
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